ヴィクトリア朝の子どもの本:イングラムコレクションより

出展資料より~イングラムコレクションに見るヴィクトリア朝イギリスの代表的な子どもの本

ここでは、国際子ども図書館展示会「ヴィクトリア朝の子どもの本:イングラムコレクションより」の出展作品から、19世紀イギリス児童文学の代表的な作品を中心にいくつかを紹介します。

  • Tom Brown's school-days(トム・ブラウンの学校生活)
Tom Brown's school-days(トム・ブラウンの学校生活

トマス・ヒューズ/作、エドマンド・J・サリバン/絵 Macmillan 1896 <当館請求記号:VZ1-26>
1857年に「An Old Boy」という匿名で出版された学校物語の古典的作品。作者の母校ラグビー校での体験を元にパブリック・スクールの生活を写実的に描いた第1作で、作者の作品の中で最も有名である。

  • Little Lord Fauntleroy (小公子)
Little Lord Fauntleroy(小公子)

フランシス・ホジソン・バーネット/作 F. Warne and Co. 1904 <当館請求記号:VZ1-193>
作者が最初に書いた子どもの本。1885年から『セント・ニコラス』誌に連載され、1886年にニューヨークとロンドンで出版された。出版時から広く賞賛され、長く読み継がれている。

  • Histories or tales of past times told by Mother Goose with morals (過ぎし日の物語集または昔話集・教訓つき)
Histories or tales of past times told by Mother Goose with morals(過ぎし日の物語集または昔話集・教訓つき)

シャルル・ペロー/作、ジェームズ・サクソン・チルダース/編 Nonesuch Press 1925 <当館請求記号:VZ1-846>
チャップブック『Contes De Ma Mère L'Oye(がちょうおばさんの昔話)』(1697年)をデザインした1719年版木版画を復刻した本。ペローによる教訓が付く。「がちょうおばさん」を英訳した「マザーグース」という言葉は、後にイギリスの伝承童謡の代名詞となる。

  • The fairy ring : a collection of tales and traditions (妖精の輪‐昔話と伝説集[グリムの昔話])
The fairy ring : a collection of tales and traditions(妖精の輪‐昔話と伝説集[グリムの昔話])

グリム兄弟/作、リチャード・ドイル/絵 J. Murray 1857 <当館請求記号:VZ1-484>
グリム童話は1823年「グリム民話集」として英訳され、すぐイギリスで人気となった。このイギリスでの評判を受けて、ドイツでも受容されたといわれる。挿絵はリチャード・ドイルによる。グリム童話は、妖精物語に対する伝統的な姿勢を変え、想像力の大切さを認識するきっかけとなった。

  • Alice's adventures in Wonderland (不思議の国のアリス)
   

ルイス・キャロル/作、ジョン・テニエル/絵 Macmillan and Co.1886 <当館請求記号:VZ1-219>
お説教がないナンセンス児童文学の最高傑作として、その後も世界中に愛され続ける。1865年に刊行され、ファンタジーの時代の到来を告げる画期的な作品となった。本書は、ジョン・テニエルによる挿画。

  • At the back of the North Wind (北風のうしろの国)

ジョージ・マクドナルド/作 Blackie  [1890]  <当館請求記号:VZ1-687>
貧しい少年と「北風」が、現実と幻想、生死の境界を行き来する創作ファンタジー。ルイス・キャロルに「アリス」の出版を決心させたのはマクドナルド家の子ども達の絶賛で、マクドナルド自身もその出版を手伝ったとされる。初版1871年。

  • The Life and adventures of Robinson Crusoe (ロビンソン・クルーソー)

ダニエル・デフォー/作 F. Warne and Co.  [1880]  <当館請求記号:VZ1-330>
児童文学としての冒険小説の始まりとされる作品。当初は子ども向けに書かれた作品ではなかったが、のちに要約版が数多く出版され、この話を手本にした児童文学作品(ロビンソネイド:Robinsonades)が生まれるきっかけとなった。初版1719年。

  • The settlers at home (沼地方の開拓者たち)

ハリエット・マーティノー/作  G. Routledge  [1883]  <当館請求記号:VZ1-727>
マーティノーは、政治経済学に関する著書で有名人となった。この作品は「プレイフェローズ(遊び仲間)」シリーズ(4部作)の第1作目であり、17世紀半ばの清教徒革命時代の移民の一家を描いている。

  • The king of the Golden River, or, The black brothers : a legend of Stiria (黄金の川の王様)

ジョン・ラスキン/作、リチャード・ドイル/絵 George Allen  1892 <当館請求記号:VZ1-927>
ジョン・ラスキンの唯一の児童文学作品。リチャード・ドイルの挿絵が、木口木版によって美しいプリントに仕上がっている。リチャード・ドイルは「シャーロック・ホームズ」の作者コナン・ドイルの伯父にあたる。初版1851年。

  • R. Caldecott's first collection of pictures and songs (コルデコット作品集1)

ランドルフ・コルデコット/絵 F. Warne and Co.  [19--]  <当館請求記号:VZ1-197>
8作品の合本版。ゴッホやゴーギャンが絶賛したとされる『ジョン・ギルピンのこっけいな出来事』の挿絵は、アメリカで最も優れた絵本に与えられるコルデコットメダルの図案になっている。初版1881年。

  • The Marquis of Carabas' picture book (カラバ侯爵の絵本)

ウォルター・クレイン/絵 G. Routledge  [1873]  <当館請求記号:VZ1-285>
"カラバ侯爵"は、収録の『長ぐつをはいた猫』に登場する猫の主人の名。漫画のように頁中で展開する表現に日本美術の影響がみられる。

PDF形式のファイル閲覧にはAdobe Readerが必要です。

>> Adobe Readerのダウンロード(別ウインドウで開きます。)