学校図書館セット貸出し(国際理解)ができるまで

「学校図書館セット貸出し」構築の流れ

対象の国・地域についてのキーワードを選定し、そこから資料を収集し(一次選書)、詳しく読み込んで検討(二次選書)と二段階の選書を行うのが特徴です。

1. 和書の選書

(1) 対象学年を決定

構築しようとするセットの対象地域が、子どもにどのように知られているかを調べ、小学校低学年向け・小学校高学年向け・中学校向けのどれにするかを決めます。

  • 例)「オセアニア・南極・北極セット」の場合
    小・中学校の社会科の教科書や地図帳のほか、英語圏なので中学校の英語の教科書も確認しました。
  • 例)「中南米セット」の場合
    教科書を見ると小学校中学年以下の教科書には中南米地域がほとんど触れられておらず、小学校低学年のセットは難しいと判断しました。
    また、中学校向けのセットを作る場合は、児童書だけでなく一般書も対象としました。

(2) 対象地域のキーワード選定

「地域を知るツール」を用いてキーワードを書き出します。広い分野から多くの資料を集めるために、できるだけ多くのキーワードを選び出します。

■地域を知るツール
ウェブサイト
冊子
  • 『体験取材!世界の国ぐに』ポプラ社、『ナショナルジオグラフィック世界の国』ほるぷ出版 など
(表1)中南米地域の場合のキーワード例
分野   キーワード
国名 メキシコ サボテン、テオティワカン、タコス
  ブラジル アマゾン川、ジャングル、移民、面積世界第5位、サッカー、カーニバル
  チリ イースター島、モアイ
人物 ダーウィン 進化論、ガラパゴス
歴史 古代文明 マヤ、アステカ、インカ、ナスカの地上絵、先住民族、スペイン、クック
自然 ガラパゴス イグアナ、ゾウガメ、自然保護

以下、省略

(3) 一次選書

選んだキーワードを国立国会図書館オンラインのタイトルや件名に入れて検索し、リストを作成します。
リストを元に書庫から本を集めます。書庫には、国立国会図書館が納本制度などで収集した児童書があります。資料現物を見て、対象年齢が合わないものや地域が合わないものなどは、ここで外します。例えば「サボテン」というキーワードで検索した本を実際見て、その内容がサボテンというタイトルの読物ではなく、中南米の植物のサボテンを扱っているかどうかを確認します。
また、候補にあがった本が購入できるかどうかチェックします。現在購入できない資料は候補から外します。その結果、児童書の少ない地域でおよそ200冊、多い地域で1,000冊近くの候補資料が残ります。

(4) 二次選書

一次選書で残った200~1,000冊の資料を分野別に並べ、類書の多い分野の資料を比較検討し、セットの基準にあう資料を残します。それから詳しく読み込む資料を100冊くらい選びます。選ばれた100冊程度の本を、担当係3名で分担して読みます。資料の評価はレビュースリップに記入しながら行います。

■選書のポイント
(おおよその資料構成比 知識6:昔話1:創作絵本・物語1:洋書2)
1. 知識の本
  • その国、地域の歴史、地理、自然、文化がわかりやすく書かれている
  • 写真、図、表、グラフ等を多く用い視覚的に子どもが興味を持つ工夫がされている
  • 日本との関係が記述されている
  • 子どもが興味を持つ分野である(例:料理、鉄道、スポーツ等)
  • 目次、索引、年表等があり、調べ学習にも使える
2. 昔話絵本と昔話集
  • その国、地域の風俗、慣習をわかりやすく伝えている
  • 簡潔で読み聞かせに向く
3. 創作の絵本、物語
  • その国、地域で読み継がれている
  • 作家や画家がその国、地域の出身者である
  • 絵からその土地の風俗がわかる、また物語は、その地域で読み継がれてきた古典もしくはその地域の特徴が表れている
■評価方法
  1. 2名以上がAと評価した資料を基本資料とします。評価が分かれた場合は、もう一人が読み、3名で会議を開き検討します。
  2. 基本資料だけで70冊集まった場合は、この中からセットを構築します。資料数が足りない場合は、もう一度キーワードを上位語にするなど検索範囲を広げ、一般書を含めた中から選書します。
  3. 全体のバランスをみて、最終的に50冊ほどまで絞り込みます。子ども向けの本が少ない地域は、B評価の資料を選ぶこともあります。 アフリカのように国数が多い場合は、主要な国に絞り、日本との関係が深い国を入れました。
書庫での選書会議

2. 洋書の選書

入手困難なものが多いので、入手可能であることを確認してから、中味を検討します。選書の際は、邦訳が刊行されていることを条件にします。邦訳と一緒に提供すると、内容がわかり、外国の文化への関心も上がります。また、製本や印刷技術から出版文化を比較することができます。

■洋書の選書ツール
ウェブサイト
冊子