2022年国際アンデルセン賞受賞者決定

【2022-042】

2022年3月21日(月)、国際児童図書評議会(International Board on Books for Young People: IBBY)は、2022年国際アンデルセン賞(Hans Christian Andersen Awards)受賞者を発表した。「小さなノーベル賞」と称される同賞は、子どもの本において永続的な貢献した作家・画家の全業績に対して授与される。授与式は、2022年9月にプトラジャヤ(マレーシア)で開催されるIBBY世界大会で行われる。

国際アンデルセン賞作家賞

マリー=オード・ミュライユ(Marie-Aude Murail
フランス

1954年、フランスのル・アーブルに生まれた。家族のうち、兄と妹も児童書の作家である。

ミュライユは、ファンタジーや冒険物語から政治、歴史、愛を扱ったものまで、印象深い登場人物が出てくる児童文学やヤングアダルト作品を100冊近く書いてきた。リテラシーや子どもの読書、難民や移民の子どもたちの権利のためにも活動している。ビアトリクス・ポターの生涯にインスピレーションを得て書いた “Miss Charity” は2010年、IBBYオナーリストに選ばれた。2004年には児童文学における功績に対し、レジオン・ドヌール勲章シュヴァリエ(5等)、2017年にはオフィシエ(4等)が授与された。2008年にドイツ児童文学賞青少年審査員賞を受賞した “Simple” は、2022年国際アンデルセン賞審査員が選んだ20冊の中に含まれている。

国際アンデルセン賞推薦資料によれば、ミュライユの作品には、「子どもを読書に導く」「真剣に、そしてユーモアをもって、希望に満ちたあたたかなまなざしで世界をとらえている」「今の社会における大きな問題に対し、いくつもの窓を開ける」など、IBBYが大切にしていることがいろいろな形で表されている。

国際アンデルセン賞画家賞

スージー・リー(Suzy Lee
韓国

1974年、韓国のソウルに生まれた。英国のロンドン芸術大学キャンバーウェル・カレッジで学んでいたときに制作した “Alice in Wonderland” をボローニャ・ブックフェアに持ち込み、同作でデビューした。2作目の “Mirror”、ニューヨーク・タイムズ最優秀絵本賞を受賞した ”Wave”(邦訳『なみ』)と ”Shadow”(邦訳『かげ』)は字のない絵本であり、どれも見開きの真ん中ののどの部分を、想像と現実の境界にしている。保護犬との思い出を描いた “Kang-yi” は、2020年のIBBYオナーリストに選ばれた。2021年には “The Yulu Linen”(曹文軒 文)が、ボローニャ・ラガッツィ賞フィクションの部に選ばれた。そのほかの作品に、創作の喜びと挫折をとらえた “Lines”(邦訳『せん』)などがある。また、自ら立ち上げた出版社 Hintoki Press から、韓国の伝統的なモチーフを取り入れた実験的な作品を発表している。

リーは推薦時の資料で、絵本とは「最も真剣な物語を最も洗練された形で表した、楽しい遊びのかたち」、自身については「絵によって命を吹き込まれた物語をとおして、読者と一緒に遊ぶ人」だと述べている。

作家賞・画家賞にノミネートされた62名のうち、作家賞の最終選考に残ったのは、マリー=オード・ミュライユに加え、アルゼンチンの María Cristina Ramos、レバノンの Fatima Sharafeddine、スロベニアの Peter Svetina、スウェーデンのアニカ・トール(Annika Thor)、オーストラリアのマーガレット・ワイルド(Margaret Wild)の6名。画家賞の最終選考に残ったのは、スージー・リーに加え、イタリアのベアトリーチェ・アレマーニャ(Beatrice Alemagna)、日本の荒井良二、ポーランドのイヴォナ・フミェレフスカ(Iwona Chmielewska)、アルゼンチンのグスティ(Gusti)、カナダのシドニー・スミス(Sydney Smith)の6名。

(敬称略。人名の日本語読みは、判明した場合のみ記載した。)

Ref:

(2022.05.13 update)