過去の展示会

国際子ども図書館主催の展示会のお知らせです。

※こちらの展示会は終了しました

童画の世界−絵雑誌とその画家たち

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特別コーナー

草創期から衰退期に至る絵雑誌の流れは、同時代におこった様々な文化や教育の動きと無関係ではありませんでした。特別コーナーではそれらのトピックを取り上げました。

(1)童話−大正期を中心に−

鈴木三重吉が大正7 年に「赤い鳥」を創刊、大正期の芸術的な童話、童謡の隆盛の中で中心的役割を果たしました。また、小川未明監修の「おとぎの世界」、島崎藤村と有島生馬が監修した「金の船」、千葉省三が編集に加わった「童話」など、「おとぎ話」とは違う新しい「童話」が次々に発表されていきました。

(2)童謡−大正期を中心に−

「赤い鳥」創刊と同時に鈴木三重吉は童謡運動を起こし、唱歌やわらべ歌と区別して、子どものための創作歌曲を「童謡」と呼びました。「赤い鳥」の北原白秋、西条八十、「金の船」の野口雨情という三大童謡詩人と後に呼ばれる詩人が「コドモノクニ」に結集し、岡本帰一、初山滋、清水良雄らが童謡に絵を添え、一時代を築きました。

童画の世界−絵雑誌とその画家たち童画の世界−絵雑誌とその画家たち

「コドモノクニ」3巻5号(1924.5)(個人蔵)
左 「兎のダンス」野口雨情 作 中山晋平 曲
右 「兎のダンス」野口雨情 作 岡本帰一 絵

(3)幼児教育

絵雑誌では、絵と様々な身体活動を組み合わせた総合的な幼児教育の試みが行われました。童謡に振付けられた新しい遊戯運動が、幼児教育や家庭教育の場に普及しました。

(4)自由画運動

童話雑誌・絵雑誌には投稿欄があり、子どもたちは身の回りのものをテーマとした自由画を応募しました。「子供之友」では、運動の主導者であった山本鼎、「コドモノクニ」では、岡本帰一、武井武雄などが選評を行い、昭和18年ごろまで子どもたちの応募作品が掲載されました。

(5)海外文化の受容

明治期以降、日本でも盛んに海外の文化が紹介され、受容されていきます。「コドモノクニ」や「子供之友」ではロシアやフランスなど海外の児童文学、絵本、昔話などを数多く紹介しています。また、クリスマスも紹介され、歳末の風景としてサンタクロースが絵雑誌にも多く登場しました。

(6)付録

当初、付録は「本誌内の別頁を付けた特別記事」を指していましたが、「小国民」明治23年1 月号に双六が付けられて以降、双六は雑誌の正月号の恒例となり、付録として定着します。大正期に入ってからは、童画家たちの絵による、組立式の紙おもちゃ・ぬり絵・カレンダーなどの様々な趣向を凝らした付録が付けられるようになりましたが、昭和13年に「正月号」を除いて付録が禁止されると、急速に勢いを失いました。

童画の世界−絵雑誌とその画家たち

幼年畫報 18巻2号(1923.2)附録

(7)子どもの本の叢書

大正4年から刊行の『模範家庭文庫』(冨山房)を始めとして、美しい挿絵や装丁による子どもの本の叢書が相次いで刊行されました。これらの叢書は、戦後の創作絵本の先駆として位置づけられます。一方、大正末期に起こった1 冊1 円の予約出版全集のブームは、子どもの本にも波及し、『日本児童文庫』(アルス社)が刊行されました。

(8)童画家による漫画

大正13年創刊の本格的な子ども漫画雑誌「子供パック」をきっかけに、大正末期から子ども向け漫画が新たなジャンルとして人気を博していきました。「コドモノクニ」や「コドモアサヒ」といった絵雑誌にも漫画ページが設けられ、コマ割り形式の作品が掲載されました。

<本文図版掲載誌一覧(( )内は当館請求記号)>

  • キンダーブック 日本玩具研究會編 (Z32−B155)
  • コドモアサヒ 朝日新聞社 (Z32−B163)
  • コドモノクニ 東京社 (Z32−B158)
  • 子供之友 婦人之友社 (Z32−B156)
  • 復刻キンダーブック フレーベル館 1978.9 (YP14−926)
  • 村山知義童画集 村山知義著 婦人之友社 2004.11(Y17−N04−H1381)
  • 幼年畫報 博文館 (Z32−B291)

なお、今回の展示会開催にあたり、大阪国際児童文学館、京都女子大学図書館、ちひろ美術館、弥生美術館、早稲田大学會津八一記念博物館から童画の原画や当館で所蔵していない貴重な資料をお借りしました。
また、監修を日本児童教育専門学校副校長岩崎真理子氏にお願いしました。(国際子ども図書館「童画の世界−絵雑誌とその画家たち」展示班)

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