国際子ども図書館開館20周年記念 中高生向けトークイベント「畠山重篤さんに聞いてみよう!おいしいカキフライを食べるには」

※こちらのイベントは終了しました。

当日のイベントの様子を掲載しています。

「森は海の恋人」運動を知っていますか?

気仙沼の漁師たちが山に木を植えたことから始まり、30年以上続けられている運動です。豊かな森が、川を通して海の生き物を育むことへの実感が、その出発点でした。
運動の中心となっていらした畠山重篤さんは、カキの養殖をしながら、フランス、スペイン、オーストラリア、アメリカと、世界各国の海と川を訪れ、河口(汽水域)の環境、生き物と鉄の関わり、海と森と人の生活など、海につながる多彩な観点から、本を書いていらっしゃいます。また、東日本大震災とそこからの海の復活を経験されています。

私たちは日々、環境問題に関するニュースに接しています。環境や暮らしを守るために何ができるかが気になっている人もいるでしょう。身近なカキから始まり、地球や生命、人と文化にまでつながる畠山さんのお話を聞いて、一緒に考えてみませんか。
地球環境を守りたい人も、生き物や自然のしくみをもっと知りたい人も、おいしいカキフライに目がない人も、大歓迎です。

畠山重篤さんの著作リスト (PDF形式:642KB)

調べものの部屋 (レンガ棟2階)では、イベントに関連して、「海の幸(さち)」をテーマとした小展示(ウェルカム展示) を行いました(2020年11月4日から12月27日まで)。

開催概要

日時 2020年12月6日(日)14時00分~16時00分 (13時30分受付開始)
場所 国際子ども図書館 アーチ棟1階 研修室1 [ACCESS]
対象 小学5年生から高校3年生まで
定員 20名(事前申込制・先着順)
申込締切 本日程は終了しました。
参加費 無料
その他

内容:講演(1時間程度)、参加者からの質疑等を交えたフリートーク(40分程度)

お申込みにあたって:
畠山重篤さんのお話のあと、質疑応答と交流の時間を設けます。充実した時間になるよう、下記の準備をお願いします。

  • 当日までに、畠山さんのご著書を1冊読んできていただくことをおすすめします。
  • 畠山重篤さんの著作リスト (PDF形式:642KB)
  • お申込み時に、 「参加したいと思った理由」をお知らせください。または、「畠山さんへの質問」「畠山さんにとくに詳しくお聞きしてみたいこと」「畠山さんと議論してみたいこと」などがありましたら、ぜひ教えて下さい。質問や詳しく聞いてみたいことなどは、11月30日(月)まで続けて受け付けます。送付先は、申込みのためのメールアドレスと同じ(jido-serviceアットマークエヌディーエルピリオドジーオーピリオドジェーピー)です 。
  • 開始時刻までにアーチ棟1階 研修室1にお集まりください。
  • 当日は、記録・広報用に写真撮影を行います。あらかじめご了承ください。
  • 付き添いの保護者の方は、参加者1人につきお1人まで、会場後方にお席を準備します。お申込みの際にお知らせください。

新型コロナウイルス感染防止のため、話者と来場者の間、および座席間に十分な距離をあけます。また、入館の際に検温や手指の消毒、マスクの着用をお願いしています。詳細は「来館サービスに関するお知らせ」をご覧ください。

イベントの様子

当日は、畠山さんにお借りした大漁旗や、海や山、カキ、震災後の様子、畠山さんたちの活動の様子などたくさんの写真を展示した会場で、盛りだくさんなお話をしていただきました。すべてはご紹介できませんが、先生の講演の概要を一部ご紹介します。

会場の写真
会場の様子

・栄養豊富なカキ
 私は気仙沼でカキの養殖をしています。今日のタイトルは「おいしいカキフライを食べるには」ですが、今は毎日朝からカキの水揚げがされています。皆さんには生ガキは早いかもしれませんが、カキフライは食べた方が良いですよ。海のミルクと言われる程栄養の塊です。 今はちょうど、アメリカの重要な休日の一つである感謝祭から、クリスマスに続く時期です。昔イギリスからアメリカに渡った人々は最初、食べるものに困りました。しかし潮がひくと栄養豊富なカキが見つかり、食べることができました。それから、野生の七面鳥も食べました。また、先住民にもらったトウモロコシの種を撒いて、半年してようやく収穫できるようになりました。そういったことを祝うのが感謝祭で、この時期には必ずカキと七面鳥を食べます。アメリカ人は今でもカキが好きなんです。

・キートセロス
 カキは、海と川が交じり合う場所、汽水域で育ちます。カキの養殖は、漁師が餌をやるのではありません。植物プランクトンの珪藻類、特にキートセロスがカキの餌になります。
 川の水の中にはプランクトンを増やす養分が含まれています。どうして含まれているのかを調べに川を上っていくと、山の中、森の中へ入っていきます。木の葉が下に落ちて腐葉土ができますが、この中に、キートセロスを増やしてくれる養分が含まれているのです。それが川の中へ、そして下流へと流れてきて、カキの養分になります。だから、気仙沼湾に注いでいる川の上流に毎年、秋に葉を落とす広葉樹を植えに行くのです。川の上流の森林がしっかりしていないと、カキの養分になるキートセロスが増えません。

・梓
 今日会場に飾っている大漁旗に「あずさ丸」と書いてありますが、植樹の際には梓の木も植えます。梓というのは元々弓を作る木でした。しなるので折れません。漁師が使う竿にも銛にも、貝を獲るのに使う道具にも、梓を使っていました。後ろの写真の櫓をこいでいる船もあずさ丸と言いますが、櫓もしなりがないといけないものです。三陸の漁師は皆、梓に命を預けているのです。
 今上天皇陛下のお印も梓です。なぜ梓なのかというと、健やかに折れたりせず育つようにということに加え、梓は弓を作る木だから、邪を払うという意味合いもあります。そしてそれ以外にも梓には重要な意味があります。書物を出版するという意味で、「上梓する」という言葉があります。なぜ梓という字が出てくるのか調べると、昔、中国で本を印刷するときに版木にしていたのが梓の木だったからだとわかりました。実は中国の梓は、字は同じでも日本とは別の種類なのですが、中国で一番位が高いとされる木です。だから、梓の木は武の方だけではなく文の方でも役立ち、梓には文武両道の意味があったのです。

・「森は海の恋人」の英訳
 「森は海の恋人」を英訳する必要があり、中学時代の英語の先生に聞いたら、これは英語と短歌ができないと良い訳はできないと言われました。そこで当時皇后陛下でいらした美智子様に御相談してみると、long forを使ってみてはどうかと仰いました。long forには「お慕い申しあげている」という意味があります。The sea is longing for the forest. 海は森をお慕い申しあげている。そしてThe forest is longing for the sea. 双方向性があります。川の両側の木はよく成長するというのは専門家の間では有名な話です。
 国連の「フォレストヒーローズ」に選ばれた時の表彰式でこの話をしたら、スタンディングオベーションを受けました。実は、long forという言い回しは聖書の詩編の中でも、「神を慕っている」という場面で出てくるのです。こういった相手の文化背景も理解しておかねばなりません。

  • トーク中の写真
    トークの様子
  • 畠山さんのご著書の写真
    畠山さんのご著書の展示

質疑応答の一部をご紹介します。

Q 鉄は沈みますが、汽水域でも同じですか?
A ここで、腐葉土ができる時にできる、フルボ酸という成分の話をします。鉄が水に溶けて川を流れる際、川の中の酸素と結びつくと、粒粒になって沈んでしまいます。でも、腐葉土の下でフルボ酸と結びつくと、水に浮くフルボ酸鉄となり、酸素とは結びつけなくなります。植物は、鉄がないと成長できません。光合成をするのに必要な葉緑素クロロフィルを作るには、鉄が必要です。なのに、鉄は酸素と結びつくと沈んでしまうから、川の流れていない海は貧血状態です。
 気仙沼湾には大川という二級河川が注いでいますが、ここにはかつてタタラ製鉄所があったから、鉄分が豊富でした。だから、3.11で真っ黒な海になった時も、復活が早かったのです。震災直後の5月に水質調査をしてもらった時には、カキが食いきれないぐらいのプランクトンがいると言われました。

Q カキの養殖で一番大切なことはなんでしょうか?
A カキが健全に育つことです。人間で言うと、空気がきれいなことと、バランスの取れた食事ができることです。だから、カキに食べさせる餌をどうやって増やすかというのが重要なキーだとわかってきました。

Q 後ろの写真のフランスの話を聞かせてください。
A ちょうど今頃パリの町中で売られているカキは、実は日本のカキです。60年程前にフランスのカキが病気で全滅しましたが、その時に、石巻の北上川河口のカキの種(種苗)を持って行きました。それが育ち、今ではフランスで種ガキがとれるようになっています。その縁があったので、3.11の時に支援してくれました。

問い合わせ先

国立国会図書館国際子ども図書館 児童サービス課 中高生向けトークイベント担当
電話:03-3827-2065

PDF形式のファイル閲覧にはAdobe Readerが必要です。

>> Adobe Readerのダウンロード(別ウインドウで開きます。)