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開館10周年及び国民読書年記念展示会
Children's Books Going Overseas from Japan

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第二部 文化の塔

その2 物語

『龍の子太郎』(松谷みよ子 著 久米宏一 絵)

この作品は、1960年に第1回講談社児童文学新人賞、1961年に産経児童出版文化賞、1962年に国際アンデルセン賞国内賞を受賞した。比較的早い時期から海外で翻訳され始め、今回展示しているロシア(No.136)、モンゴル(No.137)、中国(No.138)、フランス(No.139)、ドイツ(No.140)、ハンガリー(No.141)に加え、アメリカ、ブルガリア、ポーランドなど多くの国々で翻訳されている。当館所蔵の6か国分については、翻訳の際、表紙や挿絵の龍が各国で改めて描かれ、原書とは異なった雰囲気になっている。

作者について

松谷みよ子(1926~2015)は、1964年に私小説的な幼年童話『ちいさいモモちゃん』で第2回野間児童文芸賞、NHK児童文学奨励賞を受賞、1975年にモモちゃんシリーズの『モモちゃんとアカネちゃん』で、第5回赤い鳥文学賞受賞。また、1997年、その全業績に対して第20回巖谷小波文芸賞を受賞した。

久米宏一(1917~1991)は、画家、版画家。1976年、絵本『やまんば』、『黒潮三郎』で小学館絵画賞受賞。挿絵の仕事に、『ドブネズミ色の街』、『宿題ひきうけ株式会社』などがある。

『くまの子ウーフ』(神沢利子 作 井上洋介 絵)

この作品は、くまの子どもウーフを主人公にした幼年童話で、1969年の出版以来長く読み継がれ、累計で90万冊以上売れているロングセラー作品である。小学校の国語の教科書に掲載された。海外では、韓国(No.143)、台湾(No.144)、オランダ(No.145)、フランス(No.146)、ブラジル(No.147)、ドイツの6つの国・地域で翻訳されている。

韓国版、台湾版は、表紙が原書と同じだが、オランダ版、フランス版は裏表紙の絵が表紙に使われている。オランダ版とフランス版でウーフの向きが逆なのもおもしろい。ブラジル版は原書の表紙・裏表紙とは異なり、中の一場面の絵が表紙に使われている。

作者について

神沢利子(1924~)は児童文学作家、童謡詩人で、『ちびっこカムのぼうけん』などの幼年童話を多く執筆。自伝的な作品『いないいないばあや』で1979年に第19回日本児童文学者協会賞を受賞。

井上洋介(1931~2016)は漫画家、イラストレーターとして活躍。1994年に『月夜のじどうしゃ』(渡辺茂男文)で第25回講談社出版文化賞絵本賞を、2001年に『でんしゃえほん』で第6回日本絵本賞大賞を受賞。

『窓ぎわのトットちゃん』(黒柳徹子 著)

この作品は、著者が子どもの頃に通っていたトモエ学園での経験が元になっている。1982年に第12回新評賞第2部門、1983年に第5回路傍の石文学賞、1985年にポーランドのヤヌシュ・コルチャック賞を受賞。アメリカ、韓国(No.36)をはじめエジプト(No.153)、ロシア(No.154)、セルビア、ブルガリア、インド、スリランカなど多くの国で翻訳され、翻訳DBでの翻訳件数がトップで15件である。

多くの国では、表紙にいわさきちひろの挿絵が活かされているが、ロシア版では独自の絵が表紙に用いられている。

作者について

黒柳徹子(1933~)は、女優をはじめ幅広く活躍。『窓ぎわのトットちゃん』が当時のユニセフ(国連児童基金)事務局長に紹介されたことをきっかけに、1984年にユニセフ親善大使に就任し、現在に至る。ちひろ美術館・東京館長。また、同作品の翻訳書の印税で社会福祉法人トット基金を設立し、理事長を務めている。

『魔女の宅急便』(角野栄子 作 林明子 画)

この作品は、1985年に第23回野間児童文芸賞、第34回小学館文学賞、1986年に国際アンデルセン賞国内賞を受賞、その後アニメ化された。続編も出版され、2009年10月、第6巻で完結した。8つの国・地域で翻訳出版されており、台湾、スウェーデン、中国では、第2巻以降も出版されている。

翻訳出版の際、「魔女は怖いもの」というイメージの強い国では、主人公である魔女キキの絵がかわいらしすぎる、という意見が現地編集者から出された。そこで、カナダ版(No.156)やスウェーデン版(No.157)では、表紙の絵を現地の画家が描き直した。

作者について

角野栄子(1935~)は、1981年、『ズボン船長さんの話』で第4回旺文社児童文学賞受賞。1982年、『大どろぼうブラブラ氏』で第29回産経児童出版文化大賞受賞、1984年、旺盛な作家活動に対して、第6回路傍の石文学賞受賞。幼年童話からファンタジーまで、数多くの作品を出版。

『夏の庭 : The friends』(湯本香樹実 作)

著者にとって児童文学の第一作となるこの作品は、日本児童文学者協会新人賞、児童文芸新人賞等を受賞し、映画化、舞台化された。また、10の国・地域で翻訳され、アメリカのバチェルダー賞やボストン・グローブ=ホーン・ブック賞等を受賞。

作品から受けるイメージが国ごとに異なるのか、その違いが表紙の絵に表れているようで興味深い。作品の内容そのままに、少年たちが老人の家を覗きこむ場面や老人と対峙する少年たちを描いているものがある一方で、まるでホラー映画のような表紙になっているものもある。

作者について

湯本香樹実(1959~)は、オペラの台本を書いたことをきっかけに、テレビやラジオの脚本家となる。児童文学作家としては『夏の庭』でデビューし、『春のオルガン』は3か国で、『ポプラの秋』は8の国・地域で翻訳されている。

『ブレイブ・ストーリー』(宮部みゆき 著)

この作品は、出版後にアニメ映画や漫画、さらにゲームにもなった。アニメ映画は2007年、第30回日本アカデミー賞アニメーション作品賞優秀賞を受賞した。2007年に出版されたアメリカ版は、2008年にバチェルダー賞を受賞。フランス版(No.171)は、フランスでのアニメ映画上映後に出版され、映画のDVDと同じ表紙が採用されている。

作者について

宮部みゆき(1960~)は、1999年『理由』で第120回直木賞受賞。2002年、『理由』、『模倣犯』など大ベストセラーとなった推理小説にとどまらず、時代小説やSFなど幅広い範囲で書き続ける意欲的な創作活動に対して、第5回司馬遼太郎賞を受賞。2007年、『名もなき毒』で第41回吉川英治文学賞を受賞するなど受賞多数。著作の一部は児童向けに文庫化されており、読者層も幅広い。

『精霊の守り人』(上橋菜穂子 作 二木真希子 絵)

この作品は、1996年に第34回野間児童文芸賞新人賞、1997年に第44回産経児童出版文化賞ニッポン放送賞を受賞。漫画化やテレビアニメ化もされた。2009年にバチェルダー賞を受賞したアメリカ版(No.173)は、本書の内容を英語圏の読者により分かりやすく伝えるため、著者・訳者・現地編集者の3者が膨大な数のメールをやり取りして議論を重ねながら、訳文を決定していったという。

続編も出版され、2001年、『精霊の守り人』、『闇の守り人』、『夢の守り人』の守り人シリーズ3部作で第23回路傍の石文学賞受賞。台湾では、続編の『闇の守り人』も出版された。

作者について

上橋菜穂子(1962~)は、1992年、『月の森に、カミよ眠れ』で第25回日本児童文学者協会新人賞受賞。守り人シリーズでは上記のほかに、2000年に『闇の守り人』で第40回日本児童文学者協会賞、2003年に『神の守り人 来訪編・帰還編』で第52回小学館児童出版文化賞も受賞。

二木真希子は、スタジオジブリでアニメーションの原画を担当し、宮崎駿監督作品等を中心に活躍。著書に『世界の真ん中の木』、絵本に『小さなピスケのはじめてのたび』がある。

著作権の関係上、本電子展示会に写真を掲載していない資料もあります。