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書誌

題名:ボール
原題:Мяч
作画者:サムイル・マルシャーク作 アレクセイ・パホーモフ絵
版元:OGIZ; Leningrad
刊行年:1934年
ページ数:10ページ
判型:195x147 mm
著作物使用許諾/アレクサンドル・マルシャーク、ヤーコフ・マルシャーク、エレン・バホーモワ
© by permission of Aleksandr Marshak, Iakov Marshak, and Elen Pakhomova
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ボール
ボールの表紙
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(♪) ボール。サムイル・マルシャーク作。アレクセイ・パホーモフ絵
ボール
ボール 1-2ページ
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(♪) たのしそうに、いい音ではずむ、ぼくのボール、きみはどこへころがっていくの? 赤くて、黄色くて、青いボール、とてもきみには追いつけないよ!
ボール
ボール 3-4ページ
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(♪) ぼくはきみをてのひらでついた。(♪) きみは飛びはねていい音ではずんだ。
(♪) きみは15回つづけて飛びはねて、(♪) すみっこに行ったり戻ってきたり。
ボール
ボール 5-6ページ
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(♪) そのあときみはころころころがって
ぼくのところに戻ってこなかった。
ボール
ボール 7-8ページ
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(♪) 畑のほうにころがっていき、門のところまできたら、門をくぐりぬけて、曲がり角にたどりついた。
ボール
ボール 9-10ページ
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(♪) そこで車にひかれた。パーンと音をたててやぶれた。それでおしまい!

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ボール
ボールの裏表紙
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作家について 1/4

サムイル・マルシャーク(1887–1964)作
アレクセイ・パホーモフ(1900–1973)絵\

 1917年のロシア革命を経てソビエト社会主義共和国連邦が成立すると、新しい国を背負って立つ子どもたちのための文学の創造が始まった。マルシャークは、詩や児童劇、翻訳などで多くの作品を発表するとともに、児童文学の指導者として活躍し、ゴーリキーやチュコフスキーらとソビエト児童文学の基礎作りに大きな役割を果たした。
 モスクワ南方のヴォロネジ市に生まれ、父はユダヤ系技術者だったため一家の暮らしは貧しかった。幼少の頃から詩作の才能を発揮して、高名な評論家スターソフに認められ、その縁でゴーリキーと出会い、文学への道が開かれる。1912年、ロンドン大学に留学した。

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作家について 2/4

 1917年の革命後は、戦災孤児のための子どもの町や子ども劇場を創設し、児童劇の執筆で児童文学の仕事を始めた。1922年、ペトログラードの就学前教育研究所で児童文学のサークルを主宰し多くの作家を育てた。1924年から国立出版所児童書部の文学の責任者を務め、1934年の第一回全ソ作家大会では特別報告「小さな人たちのための大きな文学」を行っている。
 マルシャークの詩は、明るく、簡潔で、透明感があり、ユーモラスである。多くの作品が繰り返し出版され親しまれてきた。スラヴの昔話をもとにした児童劇『12の月』(1943年)は、『森は生きている』という邦題で日本でもよく知られている。

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作家について 3/4

 挿し絵を描いたパホーモフは、1920年代から始まったソビエトの絵本の黄金期に活躍を始めた画家、絵本のイラストレーター。ヴァルラーモヴォ(ロシア連邦の現ヴォログダ州)の農村に生まれる。慈善家の援助で1915年にペトログラードに出て、ヴフテマス(高等美術工芸工房)などで学んだ後、ソビエトの新しい生活をテーマに絵画やリトグラフを多数制作した。1925年から国立出版所児童書部や児童雑誌などでイラストレーターとして活躍する。マルシャークの詩に挿し絵をつけた『こわし名人』(1930年)、『ボール』(1934年)や、『何になる?』(マヤコフスキー詩 1950–1953年)などの絵本やトルストイの短編集『フィリポク』(1955年)、その他多くの作品があり、日本では、『おばあさんと孫娘とめんどり』(邦題『りんごころりん』)などが出版されている。

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作家について 4/4

 『ボール』に見るパホーモフの絵には温かみがあり、詩情豊かで、描かれた子ども像は生き生きとしていて、存在感がある。簡潔でリズミカルなマルシャークの詩に合わせて、ボールで遊ぶ男の子の動きがみごとにとらえられている。画家はまた、男の子が暮らしているソビエトの農村の暮らしぶりを読者の前に明らかにしている。新しく生まれ変わった国の様子を伝えるという創成期の子どもの本の課題を自然なかたちで果たしているといえる。

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