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本文

書誌

題名:鬼の四季遊
所蔵:国立国会図書館
種類:豆本
作画者:一円斎国丸画
版元:未詳
刊行年:1820-30年頃
判型:120×87mm
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解題

「四季あそび」というのは、「年中行事」とほぼ同じ意味のようです。天上の鬼たちは、一年を通じてこんな仕事をしているということを、雨や雪や雷などの自然現象を使って、楽しいお話に仕立てております。もちろん当時の科学意識がそうだったということではなくて、子ども向けのお話として面白く創ったものでしょう。
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鬼の四季あそび
豆本「鬼の四季あそび」の表紙 外題
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鬼の四季あそび
豆本「鬼の四季あそび」の扉 内題
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(♪) 四季を通じて起こる自然現象、雨や雪や風や雷は、どうして起こるのでしょうか。それを、天上で鬼たちがこんな「あそび」をしているからだよ、と教えているのがこの絵本です。江戸時代の子どもたちも、きっとお天気のことが気になっていたのでしょうね。(♪)
鬼たち、雲をつくる
豆本「鬼の四季あそび」の一丁表
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(♪) 雷の鬼たちが、蔵の中から雲を運び出して、臼でついたり、ざるで揉みほぐしたりしています。雷雲(かみなりぐも)をつくっているのでしょうか。鬼たち「なんとも、かたい雲じゃなあ」
鬼たち、風を吹かせる
豆本「鬼の四季あそび」の一丁裏、二丁表
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(♪) こんどは風を送る鞴(ふいご)の仕掛けです。下界に大風を吹かせているのでしょう。脇から団扇(うちわ)であおぐ者、吹き竹で吹きつける者など、様々な道具をつかって、風を起こします。鬼1「下界の者どもは、この大風にさぞ迷惑をしていることじゃろう」 鬼2「それそれ、帆掛け船が風をうけて、走るわ、走るわ」
鬼たち、雨をつくって降らせる
豆本「鬼の四季あそび」の二丁裏、三丁表
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(♪) つぎに雨を降らせようとして、空を覆うほどの大きな如雨露(じょうろ)を持ちだしました。あちこちから水を運んで来ては注ぎ入れ、ざんざんと雨を降らせています。鬼1「よしよし、その調子。雨足をもっと速めろ、はやめろ」 鬼2「でも、あまりの長雨はよくないぞ」 鬼の狂歌「底抜けに 降ると下界の 人やみる 汲み込む如雨露の 夕立の雨」
けん牛と織姫の出会い
豆本「鬼の四季あそび」の三丁裏、四丁表
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(♪) 七月七日・七夕の夜は、天上ではけん牛と織姫が、一年に一度だけ会える日です。この二人の美しさは星たちにも評判で、まるで歌舞伎役者の坂東三津五郎と岩井半四郎そっくりだと言われています。「大和屋!」の掛け声が聞こえてきそうですね。
かみなり太鼓と稲妻
豆本「鬼の四季あそび」の四丁裏、五丁表
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(♪) そろそろ夕立の仕度にかかろうとして、雷の鬼は大きな黒雲にのると、かみなり太鼓をゴロゴロ、ゴロゴロ、ゴロゴロ、ゴロゴロと打ち鳴らしました。遅れてはならじと女房の稲妻も、下界へ向かって鏡をぴかーり、ぴかりと光らせながら、雲の上をあちこち駆け回ります。稲妻「この鏡は研ぎたてだから、よく光るわいな」
あられを降らせる
豆本「鬼の四季あそび」の五丁裏、六丁表
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(♪) それから暫く雨をやめていたところ、下界では旱魃(かんばつ)だと言って、大騒ぎをしています。それではならじと鬼たちは、あられをまぜた雨を降らせることにしました。「雨つぶの中に、あられをよくまぜるんだぞ」。眼鏡をかけた年寄りの鬼が、細かく指示をだしています。
ところであられのつくり方ですが、私たちがお菓子のあられをつくるみたいに、材料を平たくのばして細長く切って、それをトントントンと細かくきざんでゆくのです。これがまるで、年の暮れの餅つきのような騒ぎ。鬼たち「やれやれ、くたびれた」「おい、ちょっと休もうか」その脇では子鬼が母鬼に、あられをねだっております。どこでも、子どもは同じですね。
みぞれの仕込み
豆本「鬼の四季あそび」の六丁裏、七丁表
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(♪) 八月・九月の暇な時期には、鬼たちは冬に備えて、みぞれの仕込みにかかります。みぞれを大きな籠に入れて、つぎつぎと棚に並べてゆきます。鬼1「気をつけないと、子鬼たちがいたずらをするぞ」 鬼2「今年のみぞれは、粒ぞろいで出来がよいわい」
天上で月見の宴
豆本「鬼の四季あそび」の七丁裏、八丁表
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(♪) 八月十五夜には、鬼たちも雲の上につどって、月見の宴をひらきます。ススキをかざり、供え物をあげて、あとは呑めや歌えの大酒盛り。鬼1「ああ、ゆかい、ゆかい」 鬼2「星の降る夜は、ひとしおゆかし〜。ジャジャジャラン」そのころの天上では、こんな歌が流行っていたのでしょうか。
鬼たち、雪を降らせる
豆本「鬼の四季あそび」の八丁裏、九丁表
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(♪) そうこうしているうちに、冬になりました。鬼たちは雪の山を、鍬(くわ)やノミ、カンナをつかって細かく砕いてゆくと、世界中に雪を降らせはじめました。鬼1「雪がだいぶたまってきたぞ」 鬼2「細かいのから、先に降らせろ」 鬼3「雪がたくさん降ると、下界では豊年のしるしだと言って、さぞ喜ぶであろう」
古い雨も、雪にする
豆本「鬼の四季あそび」の九丁裏、十丁表
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(♪) 古くなった雨は樽に入れて漉(こ)し、雪にしてから、新しい雪とまぜて降らせます。言わば、古い雨の再利用というわけですね。鬼1「なかなか、うまい加減に出来ているぞ」 鬼2「これは、上白(じょうはく)の雪というものじゃ」 鬼3「さあ、日の当たらないうちに。急いだ、急いだ」
次なる「あそび」は?
豆本「鬼の四季あそび」の十丁裏
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(♪) きょうも鬼たちは、天上から下界をのぞきこんで、いろいろな「あそび」を考えているようです。鬼の狂歌「降りつもる 世界の雪を かき入れて いざ白銀(しろがね)の山となさばや」ほんとうにそうなったら、大金持ちのお大尽(だいじん)ですね。おしまい。

16ページには朗読はありません

豆本「鬼の四季あそび」の裏見返し
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17ページには朗読はありません

豆本「鬼の四季あそび」の裏表紙
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