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書誌

題名:ぶんぶく茶釜
所蔵:国立国会図書館
種類:赤本
作画者:未詳
版元:鱗形屋
刊行年:1735-45年頃
判型:178×129mm
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解題

現代に伝わる「ぶんぶく茶釜」のお話は、タヌキが貧しい男を助ける報恩話の形をとっておりますが、これはもっと古い形のようで、素行のよくないお茶坊主たちと、おっとりしたタヌキとの、なんとも言えない素朴なやりとりが描かれております。見開きページで時間の違う3場面が扱われたり、絵と文章の配置にごちゃつきがあったりして、絵本の構成としては未熟なものが感じられますが、不思議な心地よさの残る絵本です。
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ぶんぶく茶釜
赤本「ぶんぶく茶釜」の表紙 外題
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ぶんぶく茶釜
赤本「ぶんぶく茶釜」の扉 内題
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(♪) むかしから「年をとったタヌキは人を化かす」と言われております。つまり古ダヌキのことですね。このお話も、化けることがじょうずな古ダヌキと、貴族に仕えるお茶坊主たちとの、なんともこっけいなお話です。
お茶坊主ぶん福、古ダヌキに出あう
赤本「ぶんぶく茶釜」の一丁表
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(♪) むかしむかし、東山殿にお仕えするお茶坊主に、ぶん福という男がおりました。あるときぶん福が、秋の野山へ遊びに出かけたときのこと。ひょいっと谷底を見ると、古ダヌキが、いろいろなものに化けて遊んでおります。ぶん福「はて、あじな化け方をするものじゃ。なんとかして、あいつを捕まえてやろう」
(左)タヌキ汁の相談をする
(右)古ダヌキを生け捕る
赤本「ぶんぶく茶釜」の一丁裏、二丁表
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(♪) 一計を思いついたぶん福は、ひょいと羽織をかぶると、歌舞伎の所作で、面白おかしく踊りだしました。「ああ、ひょっこり、ひょっこり」。タヌキもつられて「ああ、ひょっこり、ひょっこり」。タヌキの油断をみすましてぶん福は、「ほら、捕まえた!」。とうとうタヌキは、生け捕られてしまいました。 (♪) 屋敷にもどると、お茶坊主仲間のぶんとく、ふくあみ、ぶんさいが、よい機嫌でいっぱいやっております。ふくあみ「おお、ぶん福。秋の野山はいかがでござった」 ぶん福「それがな、きょうは大収穫。ほら、このタヌキを捕まえてきた。晩にはタヌキ汁で、たんと呑もうではないか」 ぶんさい「それは、それは、よい肴(さかな)を捕らえたものだ」
(左)タヌキ、逃げ出して茶釜となる
(右)料理の支度で大忙し
赤本「ぶんぶく茶釜」の二丁裏、三丁表
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(♪) 4人のお茶坊主は、さっそくタヌキ汁の支度にかかります。 ぶん福「さて、どこから切ってやろうかな。耳からいくか」 ぶんさい「いやいや、まずは、しっぽから切ろう」 ぶんとく「待て待て。その前に、包丁をしっかりとがないとな」 ふくあみ「それにしても、大きなタヌキだわい」 (♪) タヌキは、まな板の上で死んだふりをしておりましたが、この話を聞いて、びっくりして逃げ出しました。「アッ、逃げたぞ!」。4人のお茶坊主は、棒を持ったり、尻っぱしょりをしたり。とうとうタヌキを、草むらの隅まで追い詰めました。4人のお茶坊主「ありゃりゃ、ふしぎな事じゃ。タヌキが茶釜になっているぞ」 ぶんさい「そんならこの茶釜を持ち帰って、湯をわかしてみようではないか」
(左)お茶坊主たち、茶釜をはやしたてる
(右)火にかけられて、正体を現す
赤本「ぶんぶく茶釜」の三丁裏、四丁表
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(♪) うまく化けたつもりのタヌキでしたが、茶釜を火にかけられたから、たまりません。じわじわと熱くなってきて、「あっちっち!」。とうとう正体を現してしまいました。ふくあみ「これは何と。ぶんぶく茶釜に毛が生えてきたぞ」 (♪) 毛が生えてきた茶釜をおもしろがって、お茶坊主たちは、いっせいに囃したてました。4人のお茶坊主「ぶんぶく茶釜に毛が生えた、毛が生えた。ぶんぶく茶釜に毛が生えた、毛が生えた」これを聞いたタヌキは、すっかりおかんむりです。タヌキ「元がタヌキなんだから、毛が生えるのはあたり前だろう。もう、こんな所にいられるものか。さっさと山へ逃げ帰ろう」
お茶坊主たち追い出され、タヌキの「布団」にくるまる
赤本「ぶんぶく茶釜」の四丁裏、五丁表
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(♪) さて、4人のお茶坊主がタヌキに化かされたという話は、ご主人の東山殿にも聞こえてしまいました。東山殿「タヌキに化かされるとは、なんたる不届き! 4人とも裸にして、屋敷から追い出してしまえ!」4人は行き場もなく、秋風の吹く野原で震えておりましたが、いつの間にか、うとうとと眠ってしまいました。 そこへ、どこから現れたのかあの古ダヌキ。よせばいいのに、またちょっと、いたずら心を起こしてしまいました。タヌキ「どうだ、坊主ども。こうしてやったら、暖かでよかろう」と言いながら、自分のおチンチンの袋をだらーんと広げて、布団のようにかけてやりました。「タヌキのチンチン八畳敷」なんて言われていますが、ほんとなんでしょうかねえ。4人のお茶坊主は、「なんだか妙な心持ちじゃ。それに、ちょっと臭いような気もするし…」などと思いながら、まだうつらうつらしています。
タヌキ、また捕まる
赤本「ぶんぶく茶釜」の五丁裏
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(♪) 朝になって、我にかえったお茶坊主たち。目の前にあのタヌキがいたものですから、難なくまた捕まえることができました。そして、東山殿の前に差し出しました。4人のお茶坊主「申し上げます。我ら4人、さんざ苦労したあげく、ようやくいたずらダヌキを捕まえて参りました」 東山殿「なに、それはでかした。では、ほうびを取らせよ」ということで、お話はめでたし、めでたしなのですが、ちょっといたずら心を起こして捕まったタヌキは、しょんぼりしてますねえ。おしまい。

11ページには朗読はありません

赤本「ぶんぶく茶釜」の裏見返し
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12ページには朗読はありません

赤本「ぶんぶく茶釜」の裏表紙
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