本文
書誌
題名:桃太郎宝蔵入
所蔵:国立国会図書館
種類:豆本
版元:佐野屋
刊行年:1830-40年頃
判型:120×87mm
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解題
桃から生まれた桃太郎が犬・猿・キジのお供を連れて鬼退治をするお話は、今でも広く親しまれております。少しちがうのは、桃太郎が、桃を食べて若返ったおばあさんから生まれることです。ところで十六歳になった桃太郎が鬼が島へ向かうお話の展開は、初めての体験を通じて、子どもが大人へと成長してゆく姿を描いているのでしょう。絵と文章がバランスよく配置された、デザイン的にも優れた絵本だと思われます。
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(♪) 桃太郎といえば、よく知られているのは「桃から生まれた桃太郎」というお話ですが、実はちがう形もあるのです。桃を食べたお爺さんとお婆さんが若返って、桃太郎が生まれたというものです。昔から、桃には不思議な力があると言われていますからね。これから始まる桃太郎も、そんなお話の桃太郎です。(♪)
(左)お婆さんが、川で桃を拾う
(右)見返し
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(♪) 大きな桃と、日本一の黍(きび)団子が描かれています。桃太郎のお供をした犬・猿・キジは、このお団子をもらったのでしょうね。
(♪) 昔むかしある所に、お爺さんとお婆さんが住んでおりました。子どものいない気楽な暮しで、お爺さんは毎日山へ柴刈りに、お婆さんは川へ洗濯に出かけておりました。あるときお婆さんが川で洗濯をしていると、川上から大きな桃が流れてきましたので、お婆さんはこれを拾って、家に持ち帰りました。
(♪) 昔むかしある所に、お爺さんとお婆さんが住んでおりました。子どものいない気楽な暮しで、お爺さんは毎日山へ柴刈りに、お婆さんは川へ洗濯に出かけておりました。あるときお婆さんが川で洗濯をしていると、川上から大きな桃が流れてきましたので、お婆さんはこれを拾って、家に持ち帰りました。
ふたりが、桃を食べて若返る
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(♪) お婆さん「お爺さん、これは、きょう谷川で拾い上げた桃ですが、あんまり立派な桃なので、持ち帰ってきました。さっそく、半分ずついただくことにしましょうか」そう言いながら、ふたりがこれを食べたところ、何という不思議でしょう。お爺さんは三十五、六の男盛りに、お婆さんは二十八、九の若女房になったではありませんか。ふたりは驚くやら、喜ぶやら。手を取り合って、しみじみとお互いの顔を眺め合ったのでした。
男の子が誕生する
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(♪) 桃を食べてすっかり若返ったお婆さんの若女房は、それから暫くすると、お腹が大きくなってきました。ところが産み月になっても、子どもはなかなか生まれません。それから何と三年も経ってから、ようやく無事に男の子が生まれました。さてこの子どもですが、お腹の中に三年もいたせいでしょうか、生まれた途端にあたりを駆け回ったり、たらいの湯を高々と差し上げて、頭からザブンとかぶったりするのです。両親が驚いたのは、言うまでもありません。
桃太郎、成長する
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(♪) 桃を食べたら生まれたので、両親はこの男の子に、桃太郎という名前をつけました。桃太郎はどんどん大きくなって、寺子屋へも行くようになりましたが、読み書きでも、誰にも負けない成績をおさめました。また相撲をとっても、ケンカをしても、これまた誰にも負けない強さです。さて、桃太郎が十六歳を迎えたとき、両親に向かってこう言いました。桃太郎「実はこのたび、思い立ったことがあります。鬼が島に渡って鬼どもを退治して、宝物を持ち帰りたいと思います。どうかお許しください」驚いた両親は、いろいろとなだめましたが、桃太郎の決意は変わりません。仕方がないので、黍団子をこしらえて、送り出すことにしました。桃太郎「なるべく大きいお団子をお願いします。小さいのはケチくさく見えていけませんから」 両親「はいはい。今年は豊作だったから、うんと大きいのをこしらえてやりましょう」
途中で、犬・猿・キジに出あう
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(♪) 鬼が島で鬼退治をすることを打ち明けた桃太郎は、両親にたくさんの黍団子をつくってもらい、吉日をえらんで出発しました。途中で犬と猿とキジが、お供になろうと待ちかまえていました。犬「ワンワン。お供いたしましょう」 猿「キャッキャッ。お供いたしましょう」 キジ「ケンケン。お供いたしましょう」 桃太郎「よしよし、それなら大きな黍団子をやろう。いっしょについて来い」頼もしいお供がそろったので、桃太郎も大喜びです。
鬼が島の城門に着く
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(♪) それから桃太郎一行は、山を越え、海を渡って、ようやく鬼が島に着きました。ところが鬼どもは、城門を固く閉ざして開けようとしません。怒った桃太郎は、大声で叫びました。桃太郎「我こそは、日本から来た桃太郎という者だ。この門を開けろ。開けなければ、打ち破るぞ!」犬・猿・キジも、もう戦闘態勢です。
鬼どもを打ち負かす
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(♪) 城門の中に攻め入った桃太郎と犬・猿・キジは、鬼どもをことごとく打ち負かしてしまいました。鬼たち「これは、かなわん。逃げろ、逃げろ」総崩れになった鬼の大将は、金銀・珊瑚・宝珠などの宝物を蔵から出して、「命ばかりは…」と桃太郎に助けを求めました。桃太郎「宝物はもうこれだけか。ぜんぶ出せば、命だけは助けてやろう」 鬼の大将「はい。もうこれで、残らずでございます」
祝いの宴をはる
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(♪) 鬼が島を征伐した桃太郎一行は、故郷への凱旋をまえに、祝いの宴をはることになりました。ところがここは鬼が島。宴席をにぎわしている人の頭には、みんな角が生えております。つまり、みんな鬼たちなのです。それに「鬼ごっこ」をして遊んでいるようですが、囃(はや)しことばをよく聞くと、「鬼さん、こちら」ではなくて、「人さん、こちら」と言っています。鬼が島では「鬼ごっこ」ではなく、「人ごっこ」なのでしょうね。
桃太郎、凱旋する
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(♪) 鬼が島を後にした桃太郎一行は、金銀・珊瑚・宝珠・巻物などの宝物を船いっぱいに積み込んで、心地よい風を帆にうけながら、幾日もたたないうちに日本へ帰り着きました。そして犬・猿・キジに宝物を持たせて、故郷の両親のもとへ凱旋したのでした。
両親と再会する
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(♪) 桃太郎の無事な姿を見て、そしてたくさんの宝物を前にして、両親はどんなに喜んだことでしょう。それからますます立派になった桃太郎は、間もなく嫁を迎えて、夫婦仲も良く、末長く幸せに暮したということです。めでたし、めでたし。
15ページには朗読はありません
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16ページには朗読はありません
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