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書誌

題名:四角いどうぶつ絵本
原題:The Square Book of Animals
作画者:アーサー・ウォー詩 ウィリアム・ニコルソン絵
版元:ロンドン:ウィリアム・ハイネマン社
刊行年:1900年(1899年初版)
判型:42ページ 284×284mm

© by permission of Elizabeth Banks
ニコルソン著作権提供/エリザベス・バンクス夫人
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解題

イギリスの家庭にいる犬や猫やアヒル等、身近で親しみやすい動物たちを描いた本。 ポスターデザインを通じて商業デザイナーの道を開拓したニコルソンは、木版画家としても高く評価されていた。この絵本に見るニコルソンの画題の捉え方、空間処理、アシンメトリー(非対称構図)、その高度な線描感覚などにおいて、ニコルソンは日本版画の影響を深く受けたと考えられる。太い黒のアウトラインと茶、黄、赤で色付けし、版画芸術に新しい時代を拓く作品となったこの本のデザインは、1896年には仕上がっていたとの記述があるので、アーサー・ウォーの詩は、本の出版のために書かれた可能性がある。
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四角いどうぶつ絵本
四角いどうぶつ絵本の表紙
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四角いどうぶつ絵本
四角いどうぶつ絵本の見返し
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四角いどうぶつ絵本
四角いどうぶつ絵本の扉
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四角いどうぶつ絵本
四角いどうぶつ絵本 1-2ページ
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解説。読者諸君よ、この本のなかに難解な動物学の主人公たちを期待しないでほしい。ここにいるのは、もっと身近で、親しみやすく野暮ったい動物たちだ。
けれども、農場や牧場の生活も、大洋を越えてゆく冒険に負けず劣らず、新鮮なもの。目を、身近な生き物に転じてみようではないか。イギリスの家庭に、イギリスの動物を描いた本を!
四角いどうぶつ絵本
四角いどうぶつ絵本 3-4ページ
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(♪) イギリスのブルドッグ。門を開けると、迎えてくれる、知り合いには笑顔、他人にゃ吠える。人の中身で対応を決める。独立自尊のイギリス犬。
四角いどうぶつ絵本
四角いどうぶつ絵本 5-6ページ
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特別な猫。普通の猫には、九つの命? でも、それを上回る猫がいる! その猫が振る尻尾は、九本に分かれていて、鞘から抜かれた、その鞭音に極悪人も震え上がる。(♪)
四角いどうぶつ絵本
四角いどうぶつ絵本 7-8ページ
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(♪) 身近なめんどり。卵を、高い木に産む鳥もいれば、沼地に隠す鳥もいる。けれど、めんどりはもっと身近なところに隠す。子どもたちでも見つけられるところに。
四角いどうぶつ絵本
四角いどうぶつ絵本 9-10ページ
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学者豚。農場の哲学は、明らかにアリストテレスより分かりやすい。幼い豚さえ、エピキュロスに従い、ベーコンの随筆集も、桜草のように楽しい。(♪)
四角いどうぶつ絵本
四角いどうぶつ絵本  11-12ページ
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(♪) 麗しの白鳥。日がな一日、池を端から端へ、麗しの鳥は、我が物顔に泳ぎまわる。その世界は鏡のように広がり、自分の影にその姿を映す。
四角いどうぶつ絵本
四角いどうぶつ絵本  13-14ページ
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やさしい子羊。すべての人間は、硬貨のように、神の造幣局、つまりミントで鋳造されたと詩人は言う。中には、綺麗な模様で飾られていても、澄んだ音をたてない硬貨もある。でも、子羊は、おしなべて皆、優しく、すこしのミントソースで、最高のごちそうになる。(♪)
四角いどうぶつ絵本
四角いどうぶつ絵本  15-16ページ
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(♪) 苦労の多い山羊。「元気な子山羊だな!」と子どもたちがからかう。ある日、彼らに駆り出され、日がな一日、休みなく働かされた。堅いヤギ馬車につながれて、湾にそって走らされた。
四角いどうぶつ絵本
四角いどうぶつ絵本  17-18ページ
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幸運のアヒル。雄のアヒルをドレイクというが、昔、プリマス港にドレイクという名の人がいて、スペインの無敵艦隊に戦いを挑み、ドーヴァーから追い払った。勇敢な軍人だった! 彼のおかげで、私達の農場や家畜は、今も平和で安泰だ。スペイン人がイギリスの領土に近づいたとき、ドレイクが見事にやっつけたのだから。(♪)
四角いどうぶつ絵本
四角いどうぶつ絵本  19-20ページ
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(♪) 北のおんどり。北のおんどりよ! 朝まだき、窓辺も灰色に沈むころ、おまえの時ならぬ鳴き声が、ふたたび私を目覚めさす。善き動物たちは、小屋で眠っている。シッ! 自慢話ならめんどりに言うがよい。
四角いどうぶつ絵本
四角いどうぶつ絵本  21-22ページ
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おろかな羊。羊は、通りを行く人に似て、誰かについていったり、つまづいたり、いなないたり。運命に導かれ、気がつくと、屠殺場の入り口。引き返すにはもう遅い。(♪)
四角いどうぶつ絵本
四角いどうぶつ絵本  23-24ページ
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(♪) おとなしそうな牝牛。牝牛は、農場のなかでは、卑屈でおとなしそうに見える。でも、いったんそとの通りに出ると、相手に角をかけて、塀のむこうへ放りなげる。
四角いどうぶつ絵本
四角いどうぶつ絵本  25-26ページ
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若駒。堅い毛をまとった若駒よ、世界は君の前に広がっている。願わくは、君の前途が、麦や干草に恵まれ、輝かしくあらんことを。みんなに愛されて、一日の終わりには、緑のしとねで休めることを。(♪)
四角いどうぶつ絵本
四角いどうぶつ絵本  27-28ページ
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ニコルソン著作権提供/エリザベス・バンクス夫人
(♪) 灰緑の木々のうしろに日は沈み、農場は静けさを取り戻す。動物たちの知恵のなかで、一番すぐれたもの、それは、いつ、いかに休むかを知ることだ。

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四角いどうぶつ絵本
四角いどうぶつ絵本の裏表紙
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作者について1/4

ウィリアム・ニコルソン(1872-1949)
William Nicholson\

 イギリスの画家、イラストレーター。パリのアカデミー・ジュリアンで学ぶ。最近では彼の名前を知る人は少なくなったが、現代美術界の著名な彫刻家である息子のベン・ニコルソンの名声に隠れてしまうには、その業績はあまりにも偉大である。1890年代の後半、ベガスタフ・ブラザースの名でジェイムス・プライドと共同制作した劇場用や広告用ポスターは、色彩木版画集『アルファベット』(1897)、『12のスポーツ暦』(1897)、『ロンドン・タイプス』(1898)、『四角いどうぶつ絵本』(1900)などと共に、彼の木版画家としての優れた才能に光を当てることになった。彼の木版画の単純化された構図の背後には、様々な表現方法を自在に使いこなす技量と、制作意欲の強い芸術家性があったことを忘れてはならない。

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作者について2/4

 舞台美術や印刷美術、子どもの本の世界で幅広い活躍を見せる一方、ニコルソンは画家としての才能も大いに発揮した。室内の憂鬱や心の孤独を忘れさせてくれる肖像画『プリマス伯爵とその家族』(1908)、大きく広がる空を描いた風景画『リトルハンプトンのそばで』(1906)や『悪魔の逃亡』(1911)、そして記念すべき作品『休戦前夜』(1918)では、身近な都市の荘厳さが表現されている。またニコルソンには、別人の筆づかいのように飄々と描かれた静物画『シンプソン嬢の長靴』(1919)、『谷間の百合』(1925)、『シクラメン』(1936)などの作品もある。

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作者について3/4

 子どもの本では、マージョリー・ウィリアムズとの共作『ビロードうさぎ』(1922)が、子どもたちよりも親や図書館員の間で人気を博し、半世紀以上を経た現在でも読み継がれている。またニコルソンが一人で制作した『おりこうビル』(1926)や『海賊の双子』(1929)は、最近では収集家の間で注目を集めている。

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作者について4/4

 十九世紀後半のニコルソンの作品の復刻や、彼の仕事についての研究は少ないが、最近の著述では次のようなものがある。『ウィリアム・ニコルソンの印刷美術』コリン・キャンベル著(ロンドン:バリー・アンド・ジェンキンス、1992)、『画家ウィリアム・ニコルソン:絵画・木版・文・写真』アンドリュー・ニコルソン著(ロンドン:ガイルス・デ・ラ・メア、1996)、『ウィリアム・ニコルソン』サンフォード・シュワルツ著(ニュー・ヘイヴン:エール大学出版局、2004)
(ジェイムス・ハワード・フレイザー 2006年1月)

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