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書誌

題名:舌切雀
所蔵:国立国会図書館
種類:豆本
作画者:一筆庵可候作・渓斎英泉画(同一人物)
版元:山本
刊行年:1844-47年頃
判型:120×87mm
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解題

心やさしい正直者がよい目をみて、欲張りや不正直者が報いを受けるというお話は、このほかにも「こぶ取りじいさん」や「花咲かじじい」などでもお馴染みです。「まえがき」にあるような道徳論を持ち出すまでもなく、子どもは楽しいお話をよむうちに、自然に大切なことを身につけていったにちがいありません。人物の表情や背景、調度品の細やかな描写にまで心が配られた、完成度の高い絵本と言えるでしょう。
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舌切り雀
豆本「舌切り雀」の表紙 外題
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舌切り雀
豆本「舌切り雀」の扉 内題
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(♪)「舌切り雀」のお話は、おとぎ話のなかでもよく知られたものの一つですが、この表紙はちょっと変わっていますね。雀もお爺さんも描かれておりません。
でも、奥で踊っているのは「雀踊り」といって、奴たちが揃いの編み笠をかぶって踊る、江戸時代にはやった踊りだそうです。また手前の女の人は、お爺さんの娘で、どちらもお話の中に出てきます。それでは、絵本を開いてみることにいたしましょう。(♪)
まえがき
豆本「舌切り雀」の一丁表
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(♪) これは「まえがき」みたいなものでしょう。この絵本は、「舌切り雀、お宿はどこだ。ちょっちょっちょっ」という子どもが喜ぶお話を通して、人の欲心をたしなめたり、口はわざわいの元になることを教えるものだ、と説いています。他の絵本とは、だいぶ出だしがちがいますね。
正直爺さん親子、けがをした雀を助ける
豆本「舌切り雀」の一丁裏、二丁表
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(♪) 昔むかしあるところに、正直者のお爺さんと、気立てのよい娘が住んでおりました。二人は、かわいい雀を飼っておりました。実はこの雀、カラスに追われてけがをしていたところを、この親子に助けられたのです。朝夕餌を与えて大事に育てたからでしょうか、今では放し飼いになるほど、親子に馴れておりました。
欲ばり婆さん、雀の舌を切る
豆本「舌切り雀」の二丁裏、三丁表
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(♪) 正直爺さんの隣の家に、欲ばりなお婆さんが住んでおりました。あるときお婆さんが、洗い張りにつかうノリを置いておいたところ、あの雀が飛んできて、すっかりなめてしまいました。さあ、お婆さんはかんかんです。
お婆さん「憎いやつめ、大事なノリをみんななめてしもうた。どうしてくれよう」お婆さんは雀をつかまえると、雀の舌をちょん切ってしまいました。驚いた雀は、遠くの空へ飛んで行ってしまいました。
お爺さん親子、雀さがしの旅に出る
豆本「舌切り雀」の三丁裏、四丁表
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(♪) 舌を切られた雀が帰ってこないので、お爺さん親子は、雀さがしの旅に出かけました。お爺さん親子「舌切り雀、お宿はどこだ。ちょっちょっちょっ」するとある山道で、べつの雀に会いました。
べつの雀「これは、これは、お二人様。どちらへいらっしゃるのですか?」と聞かれたので、わけを話すと、べつの雀「それは私の兄なのです。舌を切られて難儀をしておりますので、いま薬を買いに行って参りました。これからお宿へご案内いたしましょう」と言って、道案内をしてくれました。
雀たち、お爺さん親子をもてなす
豆本「舌切り雀」の四丁裏、五丁表
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(♪) まもなく雀のお宿に着きました。そこは「隠れ里」と言われているところでした。雀たちは大喜びでお爺さん親子を迎えると、家の奥へと案内しました。あの舌を切られた雀も、薬が効いたのでしょうか、すっかり元気になっていて、お世話になったお爺さん親子に、次々とご馳走をすすめます。お爺さん「これはどうも、大変なご馳走じゃ」
お爺さん親子、軽いつづらをもらう
豆本「舌切り雀」の五丁裏、六丁表
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(♪) 宴がたけなわになると、いま江戸で大はやりの、正調「雀踊り」が披露されました。踊り手「ありゃサ、こりゃサ、わたしで、セ、よいよい!」「おいらで、セ、よいよい! ありゃサ、よいよい!」
なんとも賑やかなお座敷で、お爺さん親子もすっかり満足そうです。帰りのお土産には、重いつづらと、軽いつづらが用意されておりました。お爺さんは「わしは歳をとっているから、軽いほうがよい」と言って、軽いつづらをもらいました。
つづらから、宝物がどっさり
豆本「舌切り雀」の六丁裏、七丁表
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(♪) 家に帰ったお爺さん親子は、お土産にもらったつづらのふたを開けてびっくり! 出てくる、出てくる。大判・小判はもちろんのこと、隠れ蓑(みの)や隠れ笠、宝珠・珊瑚・巻物など、ざっくざくの宝の山でした。
これを羨ましく見ていたのが、隣の欲ばり婆さん。舌切り雀にちょっと詫びを入れれば、つづらをくれるだろうと勝手に決め込んで、さっそく「隠れ里」をさがしに出かけました。
欲ばり婆さん、重いつづらをもらう
豆本「舌切り雀」の七丁裏、八丁表
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(♪) やっとのことで「隠れ里」をさがし当てたお婆さん。初めは舌切り雀に詫びるふりをしておりましたが、ご馳走がでてお酒に酔っぱらうと、すっかり本音が出てしまいました。
お婆さん「へん、こんなまずいものが食えるかい! それより早く、お宝のたーんと入ったつづらを出すがいい。ずっしりと重いつづらをサ」 これを聞いた雀たちは、びっくりするやら、怒るやら。重いつづらをお婆さんに背負わせると、早々に追い返してしまいました。
つづらから、化物がいっぱい
豆本「舌切り雀」の八丁裏、九丁表
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(♪) 重いつづらを、やっとのことで担いできたお婆さん。ふうふう言っているうちに、途中でひもが切れてしまったからたまりません。つづらのふたが開くと、中からいっせいに化け物が飛び出してきました。一つ目小僧や見越し入道など、恐ろしい声で叫びながら、お婆さんに襲いかかってきました。お婆さん「ひゃあー、恐ろしや。ごめんなさい、ごめんなさい」
欲ばり婆さん、悪い心をわびる
豆本「舌切り雀」の九丁裏、十丁表
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(♪) 命からがら逃げ帰った欲ばり婆さんは、正直爺さんのところへ行くと、これまでの行ないを、すっかり詫びました。お婆さん「これからは心を入れ替えますので、どうかお見捨てなくお願いします。化け物を見て、ほんとうに恐ろしくなりました」 お爺さん「そうか。早くそういう気持ちになるとよかったのじゃ。やれ、やれ、しおらしいのう」
それから
豆本「舌切り雀」の十丁裏
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(♪) さてそれからは、正直爺さんは舌切り雀の宝物のおかげで、とても豊かに暮らすことが出来ました。そして娘にお婿さんをもらって、家は末々まで繁栄したということです。めでたし、めでたし。

16ページには朗読はありません

豆本「舌切り雀」の裏見返し
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17ページには朗読はありません

豆本「舌切り雀」の裏表紙
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