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児童文学者コーナー 小川未明
提供 小川未明文学館
小川未明
1882-1961 著作一覧
小川未明は、早稲田大学在学中から小説を書きはじめました。卒業後、雑誌『少年文庫』の編集にたずさわり、童話も書くようになります。1907年に第一小説集『愁人』(隆文館)を、1910年に第一童話集『赤い船』(京文堂)を刊行します。未明は、新浪漫主義の小説家でありながら、社会主義思想にも近づいていきます。1926年に感想「今後を童話作家に」を発表後は、小説の筆を折って、童話に専念するようになりました。未明は、生涯に1200編ほどの童話を書いています。
小川未明が大きく批判されたのは、戦後の1950年代でした。長い戦争のあとの新しい現実のなかで子どもたちに何をどう書けばいいのか―児童文学者たちは、未明童話を批判的に検討することをとおして、それを考えようとしたのです。人が死ぬ、草木が枯れる、町がほろびる……、未明童話のテーマは、ネガティブで子どもの文学にふさわしくないといわれました。その文章も、呪文的でわかりにくいともいわれたのです。そして、1960年前後に、日本の子どもの文学は、未明に代表される近代童話から、現代児童文学へと転換していきました。
ところが、1980年代には、かつてはしりぞけられた死の問題などが、人間にとって大切なものとして児童文学でも書かれるようになります。未明童話は、大人の文学からはっきり分かれた子どもの文学になっていない、「未分化の児童文学」だという意見もありましたが、90年代以降は、児童文学なのか文学なのか境目がはっきりしない作品も数多く書かれています。これらは、未明的なものの復権ともいえ、未明は、没後50年のいまも、子どもの文学について考える素材を提供しつづけています。
児-2-1魯鈍な猫
小川未明 著
ゆまに書房 2000(平成12)
(『編年体大正文学全集.第1巻(大正元年)』)
当館請求記号 KH6-G504 (初版 特106-259)
未明の唯一の長編小説。『読売新聞』に1912(明治45)年4月24日から6月5日まで連載され、1912(大正元)年9月春陽堂刊行の『魯鈍な猫』に収録された。
児-2-2金の輪
小川未明 著 広島新太郎 装幀
ほるぷ出版 1974(昭和49)
(日本児童文学館 : 名著複刻 第2集 11)
当館請求記号 KH6-23
南北社1919(大正8)年刊の複製。『赤い船』、『星の世界より』につづく未明の第3童話集。表題作である「金の輪」は、早逝した長男への鎮魂歌でもあるという。
児-2-3未明ひらかな童話讀本
小川未明 著 初山滋 装幀 黒崎義介 挿繪
文教書院 1936(昭和11)
当館請求記号 Y8-N00-650
幼稚園から小学2、3年生くらいまでの子どものために出した童話集。20編からなる。『未明カタカナ童話読本』も同時出版。当時、ひらがな童話、カタカナ童話という形式が流行した。画像は箱と標題紙。
児-2-4夜の進軍らっぱ
小川未明 [著]
講談社 1977(昭和52)
(定本小川未明童話全集 12)
当館請求記号 Y7-5730
元は1940(昭和15)年アルス刊の童話集『夜の進軍喇叭』に収録。この童話集は、戦場ではなく銃後で助け合いながら生きる人々を書いた作品が大半である。その姿勢は戦争協力ともとられた。
児-2-6赤い蝋燭と人魚
小川未明 作 いわさきちひろ 画
童心社 1975(昭和50)
(若い人の絵本)
当館請求記号 Y7-4719
1921(大正10)年2月16~20日『東京朝日新聞』夕刊で初出。この絵本は画家いわさきにとって未完の遺作となった。 画像は標題紙。
児-2-7赤い蝋燭と人魚
小川未明 文 酒井駒子 絵
偕成社 2002(平成14)
当館請求記号 Y8-N02-245
1921(大正10)年新聞連載の同年、第4童話集としてこの作品を収録した『赤い蝋燭と人魚』が天佑社より刊行された。酒井駒子による絵本化は、黒と赤が印象的な作品になっている。
児-2-8日本児童文学館 : 名著複刻 第2集 3 少年文庫 壱之巻
島村抱月 編
ほるぷ出版 1974(昭和49)
当館請求記号 KH6-23
金尾文淵堂1906(明治39)年刊の複製。未明は、早稲田文学社で島村抱月のもと『少年文庫』の編集に携わった。自身も同誌のために「海底の都」等の童話や童謡を書いている。
児-2-9牛女
小川未明 [著] [池田永治 絵]
『おとぎの世界 復刻版』 1年2号
岩崎書店 1984(昭和59)
当館請求記号 Z32-B102
未明は、童話雑誌『おとぎの世界』を主宰し、同誌に代表作「牛女」をはじめとして多数の童話を発表した。
児-2-10海と太陽
小川未明 [著] 初山滋 [絵]
『おとぎの世界 復刻版』 1年3号
岩崎書店 1984(昭和59)
当館請求記号 Z32-B102
未明は、『赤い鳥』や主宰した『おとぎの世界』に、多くの童謡も発表した。この「海と太陽」には神話的世界が描き出され、童謡には未明童話とは別の可能性を見ることもできる。
児-2-11月夜と眼鏡
小川未明 [著] 清水良雄 [絵]
『赤い鳥 複製版』第9巻1号
日本近代文学館 1968(昭和43)
当館請求記号 Z13-889
静かな暮らしをしているおばあさんのところへ眼鏡屋と蝶の少女が訪れる話。この雑誌の創刊により、未明は童話作家としての活動をひろげる。
児-2-12雪来る前の高原の話
小川未明 [著] 川上四郎 [絵]
『童話』7巻1号
コドモ社 1926(大正15)
当館請求記号 Z32-B311
「雪来る前の高原の話」は「童話作家宣言」後に書かれた代表的な童話作品。この他にも、児童雑誌『童話』に意欲的に発表した。
児-2-13ナンデモハイリマス
小川未明 作 川上四郎 画
『コドモノクニ』11巻1号
東京社 1932(昭和7)
当館請求記号 Z32-B158
正チャンという少年の、何でも入るポケットの話。1929(昭和4)年からの自由芸術家連盟における中心的存在としての未明による、著名な幼年童話。
児-2-14タノシイ蝶タチ
小川未明 作 川上四郎 画
『コドモノクニ』13巻4号
東京社 1934(昭和9)
当館請求記号 Z32-B158
蝶の家に姉、弟、妹が集まり、母を探しに行くと決めてから眠るまでの話。未明はこの雑誌で童話主任を務めた。
児-2-16現代児童文学論 : 近代童話批判
古田足日 著
くろしお出版 1959(昭和34)
当館請求記号 909-H862g
1953(昭和28)年に「『少年文学』の旗の下に!」を発表し、日本近代童話からの脱却を提言した著者の児童文学論。小川未明を筆頭に日本近代童話について、生命の連続をモチーフにした原始的なものと批判した。画像は箱と「さよなら未明」の冒頭部。
児-2-17子どもと文学
石井桃子等 著
福音館書店 1967(昭和42)
当館請求記号 909-I583k-h (初版 909-I583k)
初版は1960(昭和35)年に中央公論社から出版された。石井桃子、いぬいとみこ、鈴木晋一、瀬田貞二、松居直、渡辺茂男の、日本児童文学に関する批評をまとめたもの。未明童話については、才能を評価しながらも、子どものために描かれたものではないと批判した。
児-2-18未明童話の本質 : 「赤い蝋燭と人魚」の研究
上笙一郎 著
勁草書房 1966(昭和41)
当館請求記号 913.8-O272Km
「赤い蝋燭と人魚」の成立過程を、民俗学的・社会経済学的・哲学的なアプローチを交えて考証した研究書。本書のなかで、人魚のモデルについても追及している。画像は標題紙。
児-2-19父 小川未明
岡上鈴江 著
新評論 2002(平成14)
(Shinhyoron selection ; 29)
当館請求記号 KG583-H31 (初版 KG583-6)
初版は1970(昭和45)年刊。小川未明の次女である著者が、没後に未明にまつわる思い出をまとめたもの。近親者ならではの視点で未明を捉えている。
児-2-20戦時児童文学論 : 小川未明、浜田広介、坪田譲治に沿って
山中恒 著
大月書店 2010(平成22)
当館請求記号 KG411-J31
戦時下の戦争を賛美した児童文学について、特に小川未明、浜田広介、坪田譲治の作品を中心に、著者が収集した豊富な資料とともに論じる。